狭心症と心筋梗塞

心臓病は、日本人の死亡率の第2位であり、その多くは急性心筋梗塞です。

心臓の周りには冠動脈という血管が走っており、その冠動脈が心臓の筋肉(心筋)に酸素や栄養を供給することによってポンプの働きを維持しています。

冠動脈の血管壁がコレステロールや中性脂肪、加齢性の変化等によって粥腫(アテローム)ができて肥厚します。この血管壁の肥厚によって血管内が狭くなると、心筋に十分な酸素が供給できなくなり、運動をしたときなどに胸部の痛みが出現します。これを狭心症といいます。 下図2

そのアテロームを覆う膜が破れることによって血の塊(血栓)ができて、心筋への血流が遮断されて心筋梗塞がおこります。 下図4

心筋梗塞へ一歩手前の状態として不安定狭心症があります(下図3)。しかし、突然心筋梗塞を起こす人も多く、必ずしもこの段階を踏むとは限りません。

急性心筋梗塞の症状
 
 一般的に、長引く激しい胸痛で始まり、胸骨裏面の強い圧迫感や絞扼感などを訴えます。持続時間は30分以上で、多くは6~10時間持続します。高齢者、糖尿病合併症例、川崎病合併症例では胸痛を訴える頻度は減少します。急性心筋梗塞患者の約半数には発症前に狭心症発作があるといわれています。

正常な冠動脈血管内が十分広く、スムーズに血流が流れます。加齢とともに、動脈硬化が進行します。高コレステロール血症、高脂血症、高血圧、糖尿病、喫煙はその加速因子です。食生活の改善と適度な運動を心がけ、体重増加に注意が必要です。薬により進行を抑制することができます。当院では、動脈硬化の程度や、総合的なリスク評価に基づいて薬を処方いたします。
動脈硬化・労作性狭心症・安定狭心症コレステロールや中性脂肪が冠動脈壁に浸潤し、粥腫(アテローム)を形成して肥厚していきます。血管内が狭くなり、十分な血液が流れにくくなります。狭窄が高度になると労作時(運動をした時)に十分な血液を心筋に供給できず、痛みとして症状が現れます。動脈硬化の程度や冠動脈の狭窄の程度を評価し、適切な加療が必要な状態です。当院では、この状態の程度を把握し、進行抑制に努めます。トレッドミル検査等を施行し、必要に応じて狭窄の程度を、マルチスライスCTや心筋シンチグラフィーなどにより関連医療機関等で評価します。
不安定狭心症粥腫(アテローム)を覆う血管壁が破れると、血管内にアテロームが血流に触れます。アテロームを異物と認識し、血小板が集まり、血液の塊ができます。(血栓形成)血液がほとんど流れなくなり、症状が出やすくなります。急性心筋梗塞に移行しやすい状態です。
心筋梗塞血栓が血液の流れを完全に遮断し、潅流を受けていた心筋が死んでしまいます。範囲や場所により様々な症状を呈しますが、命を落とす可能性もあります。非常に強い胸痛や息苦しさを自覚し、救急車で病院に搬送される状態です。