動悸

■ 動悸に隠れている病気

 動悸とは日常の生活において自分の心臓の拍動を不快に自覚する状態を指します。脈がドキドキと速く感じる症状の場合、その動悸の原因として、心臓以外の要因によって脈拍が速くなる場合を、不整脈から除外する必要があります。

 人間は安静時に脈が100回近くになると動悸として感じることが多く、逆に、脈が遅くなると動悸としてではなく、倦怠感やめまいなどを感じやすくなります。

 生理的なものとしては、食事を急いで食べると、消化管の運動が激しくなり、その運動を支えるため心臓が速くなる「ダンピング症候群」や、飲酒やカフェイン、喫煙などによって脈が速くなる場合などがあります。前者は食事をゆっくりとることによって、後者はアルコールやカフェイン、たばこを控えることによって症状を抑えることができます。

 また、薬を内服している場合は、薬が原因のことがあります。降圧薬の一部や気管支拡張薬、腹痛の薬や血液をサラサラにする薬の一部に脈拍を速くする副作用を持つものがあります。薬を内服している方は、薬局でもらう薬の案内に目を通すとよいかもしれません。

 身体の異常であれば、貧血 発熱 甲状腺機能亢進、慢性肺疾患、更年期障害、精神的な要因 などが考えられます。いずれも、それらの有無と、その原因について調べる必要があります。

 動悸の原因が貧血で、その原因が、子宮筋腫や消化管出血であることもしばしばありますので、動悸が改善しない場合などは、医療機関で精査を受けることが大切でです。

■ 不整脈が原因の動悸

 脈が飛んだり、突然速くなったり、突然止まったり、不規則であったり などの症状は不整脈の症状の可能性があります。

 「ドクン」と1回飛ぶ感じがあれば 期外収縮 と呼ばれる不整脈の可能性があり、期外収縮には心房由来(上室性)のものと心室由来のものがあります。上室性の場合、脈が1拍抜ける感じを自覚し、心室性の場合は脈が飛ぶ感じを自覚することが多く、時に、2-3拍に1回と周期的におこります。いずれも基礎的心疾患がなけば、問題ないことがほとんどです。気をつけなければならいない点は、それぞれが、心室性頻拍、心房細動といった不整脈のトリガーになっていないかです。
 一方、リズムは正しくても突然始まる数秒以上続く拍動は 発作性上室性頻拍症、心房粗動などが疑われます。これらは最近、カテーテル治療により完治することができます。明け方に多く出現したり、飲酒の翌日でることが多いものに心房細動があります。
 これらを含め、多くの不整脈は動悸時の心電図をとることによって診断されます。動悸がある時に医療機関に受診できればよいですが、動悸が治まっている場合でも医療機関を受診し、24時間の心電図をとるホルター心電図検査や携帯心電計の貸し出しをうけて診断できることもあります。


■ 動悸が脳梗塞の原因に

 動悸と脳梗塞は縁がないように思われるが、心房細動という不整脈は、重症な脳梗塞の原因となることが多く、脳梗塞の1/3は心房細動が原因です。心房細動という不整脈は、胸が躍るような感じ、今までに感じたことのない胸の違和感として出現することがしばしばあります。最初、心房細動は、数十秒の動悸として発症することが多く、徐々に自覚症状がなくなり、治ったように感じてしまいます。心房細動は健康診断で偶然発見されなければ、動悸を訴えて医療機関を受診しない限り、放置されることがほとんどです。65歳以上では5%の人が持っているといわれ、加齢とともに頻度が高くなります。脳梗塞になって初めてその病気について理解する人がたくさんいます。

 なぜ、心房細動が脳梗塞の原因になるのでしょうか?

 心房細動になると心臓の心房が収縮しなくなり、心房の中に血の塊が出来ます。血の塊が、心房からはがれて、血管を流れて、脳血管を詰まらせて脳梗塞を発症するのです。心房細動がある人は、脳梗塞になる確率が3~7倍であり、予防が大切です。不整脈の薬で心房細動を出ないようにすることは、脳梗塞の予防には全くならないことがわかっており、予防にはワルファリンという血液をサラサラにする薬を内服する必要があります。ワルファリンは脳梗塞発症の確立を半分に下げることができるが、ワルファリンの内服には、月に1回採血をして、ワルファリンの効果(プロトロンビン時間)の程度の判定をする必要がある。治療域を超えていると、脳出血などのリスクになるし、治療域に入っていないと、効果がありません。さらに、最近は採血による判定を必要としない新しい薬も開発・販売されております。心房細動が続くと、心臓の機能が低下し、むくみや息切れの原因となります。脳梗塞の予防とともに、心不全の予防が大切です。動悸を自覚したら時間を割いて、循環器専門医を是非受診をお勧めします。